デジタルなシャウカステン

四つ切り対応高輝度シャウカステンが完成しました。

先日のRTにて四つ切りの撮影を行ったのは良いのですが、大面積の撮影でしたので、数枚のフィルムをタイル状に配置して撮影を行い、その後にフィルム画像を繋ぎ合わせて撮影対象物の評価を行う必要が生じました。

フィルム画像を繋ぎ合わせるには物理的にフィルムをタイル状に再配置する方法も在りますが、それを行っても繋ぎ合わせたフィルムを背後から照らす光源がありませんので、フィルム観察が難しいです。

またフィルムスキャナーでパソコンに取り込む方法も考えられますが、実は汎用のフィルムスキャナーは一般写真フィルムの濃度範囲を想定していますので、最大濃度がせいぜい2.0程度かそれ未満までしか対応してなく、工業用の濃度3.0を超える様なフィルムを取り込む事は出来ません。

ですので、従来は妥協策として汎用のライトボックスにフィルムを置いて、デジカメで撮影してデジタル処理で間に合わせて来ました。

ただライトボックスでは厄介なふたつの問題があります。ひとつは輝度が足りない点。

もうひとつは大きさが足りない点です。

ですので、結局は四つ切り対応のシャウカステンが必要になる事態となりました。

完成してしまえば、あっさりした物です。

フィルムを置くと、

シャウカステン製作は最初は割りと簡単に済むと思っていましたが、けっこう手間が掛かってしまいました。

技術的には、
・光源はパワーLED。
・輝度はPWMにて電流を直線制御。
・PWM電流制御はデジタルでのPID制御から自己学習方式。
・LED点灯の制御統括はGPCSTNで、IIC通信経由。
・LEDの温度管理を付加。
な感じです。
光源として用いるパワーLEDは5Wの物を約50個用いています。これはLEDを分散させる事による面輝度の平坦化と発熱の分散、そして部分点灯での12インチフィルムへの対応を考慮しています。

輝度のPWM制御は電源の使用効率の向上を意図しています。主電源を24VとしてパワーLEDを直列に5~6個繋げますので、アナログリニアな制御ではリニアパワートランジスタの熱負荷が深刻になります。PWMは基本周波数を32KHzでスイッチングパワートランジスタをドライブする降圧型スイッチングレギュレーション方式とする事で発熱と制御損失を少なくしています。

実際の電流制御範囲は50mAから1000mAとして、マイクロプロセッサによるPID制御を行っていましたが、最終的には簡単な自己学習方式となりました。PID制御は専らアナログで語られますが、自分の経験からもアナログ制御は負荷の大小や応答遅延でいちいち回路定数を変化させなければならないのが無茶苦茶面倒でした。ですのでマイクロプロセッサでPIDをデジタルで計算させてやる方が安定します。昔、アナログでPID回路設計を行った時にもデジタル方式を客先に提案したのですが、その時は却下されました。今回はデジタルPID制御はそうですが、そこに簡単な自己学習のフィードバックを入れて電流制御の応答速度を向上させています。

LEDの点灯制御は、LEDへのPWM電流出力基板が都合3枚ありますので、それらを統括する機能と人間からの輝度調整等の操作を受け付ける操作制御をGPCSTN仕様のホスト基板で行っています。但し、今回の制御統括では基板間のデータ交信はRS485ではなくIICとしています。IICは隣接する様な基板間での簡易通信に向いていますので、オペセットをひとつにして簡易化しています。オペセットはひとつですが、それのみでLEDの輝度操作と六つ切り面発光と12インチフィルムサイズ発光の切替を賄っています。GPCSTNのIIC仕様ではIICケーブルでの電源供給も考慮していますので、多基板の電源回路の無駄な重複を避けています。

尚、パワーLEDは発熱がLEDのPN接合部でピンポイントで起こるので注意が必要です。今回の5WパワーLEDは最大ジャンクション温度が160℃となっていましたが、未だ接合部の温度が測れないので、LEDの後面に温度センサを設置して温度監視を行い、取り敢えず70℃(Configで変更可能)でLEDを強制消灯する事としました。本来は冷却ファンを付加すれば良かったのですが、取り付ける場所が得られませんでした。追々、筐体に納まる小型の冷却ファンを探して取り付けようと思いますが、風の流れをどの様に通すかを悩んでいます。

完成後にシャウカステンとライトボックスの輝度を比較すると、シャウカステンの最低輝度(50mA)でライトボックスより明るくなっています。ライトボックスは中身が蛍光灯なので、輝度がムラになってしまいます。

シャウカステンの最大輝度(1000mA)では、直視すると目が痛くなります。

Bye! by Kisaki.