ドライ探傷の実用化

探傷剤を介さずに超音波探傷を行う実験。
未だ限定的ですが無水・無油で超音波を被検体に通す事が可能になりました。

まあ「何で?」って事ですが、探傷環境に依って必要とされる技術になります。
以前よりポールUTにて手の届かない部位のUTを実施して来ていますが、運用をもっと簡易にする事と、現在開発中のリモート探傷装置への搭載を目的としています。

リモート探傷はやっとバージョン3まで来てやっと目処が付く様になりました。

超音波探傷では探触子から発せられた超音波を非検体に効率良く伝達するのに、水や油を主成分とする接触媒質を用いますが、探傷には専ら接触媒質を被検体に刷毛などで塗布する必要があります。
ポールUTでは手が届かない部位の探傷ですので伝導管を通して接触媒質を供給していますが、リモート探傷ではその伝導管の重量が気になって来ます。またポールUTの機構に於いても探触子を被検体に密着させるシステムの重量も相応であるので、軽量化が求められます。
そこで、無水・無油で且つ無電源のリモート探傷が求められる事となりました。

無水・無油での探傷で問題となるのは探傷感度の低下ですが、超音波探触子に取り付けるアダプタを工夫する事によって、実験では概ね3dB程度の感度低下で済む様になりました。ほぼ誤差範囲内に収まる感度と言えます。

非検体探傷面の状態によって探傷感度は左右されますが、塗装された非検体に対しても通常の探傷と殆ど変わりのない探傷信号を得られました。

φ50の配管への探傷も良好で、使い勝手としては一般的な探傷よりも塩梅が良さそうな一面もあります。

副次的なメリットとして探触子への機械的ストレスが軽減され、探触子の損耗を抑えられる様になりました。

超音波はだいたい良く通るようになりましたが、総合的には未だ耐久性とか運用面に気に入らない点がありますので、パラメータの熟成と機構の再設計で現場運用に十分な性能を目指したいと思います。

Bye! by Kisaki.